本: 2007年12月アーカイブ

071224_01.jpg

mixiのbookコミュで強く推薦させていたので読んでみたのですが、読んでよかったと思える作品でした。

序章の内容でいきなり「ぼくは勉強ができない。でも女の子にはもてる」だったので、なんだか事前に想像していたものとは随分違ってるなと感じたのですが、読み進めるうちにこの本が倫理観や価値観を扱ったものだということが解りました。いわゆる的な「普通」とは異なった価値観を身につけた男の子が日常生活の中で起こった事柄に対して、どういうふうに感じ、どういうことを学んだか、ということを綴ったお話なのですが、少なくとも私が彼と同じ高校生の時にはまるでそういった考え方ができなかった、発想そのものが無かったので、お話とはいえ軽いショックを受けたものです。
しかしながら著者のあとがきには、この本は大人にこそ読んで欲しいと書かれていたことに安堵してしまう自分の単純さに呆れながらも、著者の「同時代性を信じない」という言葉について深く共感しました。そのあとがきの一節を引用すると

何故なら、私は、同時代性という言葉を信じていないからだ。時代のまっただなかにいる者に、その時代を読み取ることは難しい。叙情は常に遅れてきた客観視の中に存在するし、自分の内なる倫理は過去の積木の隙間潜むものでは無いだろうか。

過去にあったトラブルや心境の変化など、そのときはまるで解らなかったどうすべきかという答えを、今、改めて考えてみると、正解というものが無いにしても当時の自分に道標を示す程度の解を得ているケースが殆どです。当時の自分にはまるで理解できなかったことも、客観性とその事柄から波及した数々の感情を時が経ってから整理すると、その時代に見えなかったものがいとも簡単に見えてくる。筆者の同時代性を信じないという言葉への共感とともに、優れた客観性を養うことは時代の只中に道標を見つけるための大きな助け、道具となることを示しているようにも思えました。

また、対人関係の話についても思うところがいろいろありました。以前より、仕事で小言や些細なことでも注意してくる人間は極めて有益な存在なので絶対に遠ざけてはいけない、というルールを守ってきてきました。それがたとえ相手の感情的な問題であっても、それを聞くことは自分にとって益にこそなれマイナスになったことは一度としてありませんので、このルールはなかなか良い心がけだったと自賛していたのですが、こと仕事以外となると兎角に自分の世界を侵食されることを嫌い、なんとなくネガティブな印象があるというだけで積極的に避けていた節を自覚しています。それこそ人見知りレベルで避けているケースすらあるので、よほどの消極性と言えるでしょう。しかしながら、本当に大切なのは仕事上に限定しない、枷の無い、限定されない場面での感情であるようです。それこそ、この本でいうところの勉強が私にとっての仕事ということになるのでしょうか。いつも穏やかな日常こそ望んでいる私にとって私生活の対人的な刺激は多くを必要としない要素だと思っていましたが、それは避けていただけであってむしろ積極的に取り込む必要があるもので、あえて深く考えないようにしていたこととともに是正すべき思考、即座に改めなければならない類のものです。対人的な刺激というものは、ようするにストレスと言い換えてしまってほぼ語弊は無いと思いますが、それを仕事では甘受しているのだから自分の時間くらい好きにさせてくれ!という思考は一見同意したくなります。しかし、それを客観的に見てみれば、即座に「自分に甘い」と斬り捨てられて当然のもので、なにも後から叙情に思いを馳せなくとも現時点においてすら自明と言えるでしょう。有体に言ってしまえば、自分の殻にとじこもっている状態なわけですから・・・

年末のこのような時期に、このような本にめぐり合えるということは、何かしらの縁を感じずにはいられません。特に奇特な主張でもなく、またその程度の理屈も本を読まなければ気が付かないというわけでもありませんが、きっかけというものはとても重要であり、そのきっかけというものはすべからく外部からの刺激によってもたらされます。今回得た教訓をなるべくシンプルに捉えるのならば、「穏やかな日々を望むにはまだ未熟に過ぎる」ということ。私生活でネガティブな感情を積極的に取り込むなど言うと酔狂のように思えますが、まぶしいものから目を逸らさないこと、私生活でもイヤなことを言う人の言葉にも耳を傾けること、と考えれば、割と当たり前のことのように思えます。ただし、それを実践するにはそれなりの心構えと少しの勇気がいることでしょう。

オススメの本と言うには何か違うような感情があり、あくまで主観でしか語れませんが、少なくとも読む価値があり、冒頭でも述べたとおり読んでよかったと思える本でした。

藤崎竜で屍鬼!?

user-pic
0

最近創刊されたらしいジャンプスクウェアで、小野不由実先生の屍鬼のマンガが新連載としてはじまったそうです。すっご驚きました。

まずは小野先生。好きな小説を10個挙げろといわれたら8つあたり選んだ後、強烈に悩むのですが、1つだけ挙げろといわれたら現時点だと即答で「十二国記」と応える私にとって、まさにネ申認定の作家さんです。まったく続編がでなくて思うようにならないあたりが神性をさらに高めている困った御仁であり、近頃は悟りでもひらかないと続編を待つのは無理だとおもったりおもわなかったりです。
無論、屍鬼も読んでいますが、登場人物がボリュームに比して異様なほど多いので、マンガには極めて不向きだと思います。最近の寒村サスペンスブームに合致している点でいまさらながらマンガになったのかなぁとも思うのですが、それだけでチョイスしたのならば些か浅慮に過ぎると言わざるを得ないでしょう。

そして藤崎竜。とてつもないセンスを感じるのに、その方向性があまりに一般的なストライクゾーンとかけ離れている上に独自の世界観を頑なに貫き通してしまうので、なかなか作品が軌道に乗らない印象があります。好意的に評価すると哲学的かつ暗喩的ユーモアに富んだスケールの大きい作品を得意としている漫画家ということになります。作画も(特にあの大きな足が好きだ!)ナンセンスかつ深遠なストーリーテリングも味があるとおもうのですが、客観的に見ると難解で独りよがりで大風呂敷を広げたがる作風だよね…ということになってしまうのでしょう。

この二人の共通点は、話の加速が非常に悪い点。小野先生は小説家なのでそれも許されるのでしょうが、藤崎さんは好き勝手やらせれば高確率で大作を仕上げる力があるのにもかかわらず、加速が遅いせいで数度の打ち切りを食らっていることからもわかるように、漫画家としては致命的な弱点と言えます。
いうなれば風力特性の悪いボディーに低速に弱いエンジンを乗っけて、ターマックの難コースに挑むラリードライバーのようなものでしょうか。少なくとも屍鬼は途中でソフトランディング(打ち切りともいう)できるようなポイントが無いので、最後まで踏破するか明らかな形でリタイアするか、それ以外考えられません。きっと最後まで描ききれば良作以上の出来に落ち着くとは思うのですが、創刊したばかりのマンガ雑誌がおもしろくなってくるまでにどこまで我慢できるか、まずは半年過ぎたあたりに山場がありそうな予感です。

初回の掴みは・・・ やはりというべきか「加速の悪さ」を感じずにはいられませんが、これはストーリー上仕方が無いので問題は次の号からどれくらいのページ数で掲載されるかということ、それに尽きるでしょう。あのページ数の2/3も維持できれば希望はあるのともうのですが・・・ おそらくそのペースは厳しいのではないでしょうか。
原作者にも漫画家にも思い入れがある作品なので、なんとか完結まで持ちこたえてくれると良いのですが・・・ 好材料としては、藤崎さんの作品は細切れにすると訳がわからなくなるので、週間ペースより月間ペースのがしっくりきそうな気がする点と、円満完結した封神演技とおなじく原作アリの作品なので、暴走する心配がいらなさそうな点の2つ、心許ない材料ではありますが、今後の活躍をおおいに期待しています。

071209.jpg
いつか読みたいと思っていた「いつまでもデブと思うなよ」をアマゾン召還してしまいました。
新書系ベストセラーは1年も経つとブックオフで半値くらいで買えてしまうことから定価購入を控えていたのですが、興味があるのに700円を出し渋るのも変な話なので召還とあいなったわけです。

さて、この本の著者である岡田氏は、過去に2度ダイエットに失敗しているのですが、2度目のダイエットはWeb企画でレポートされていて、私はそれをいつも楽しみに読んでいました。管理栄養士とフィットネスインストラクターがサポートしながらダイエットをするという企画で当初は大成功の見込みだったのですが、確か-20kgくらいまで到達した頃に突然更新されなくなり、それ以降どうなったのかとても気になっていたために今回その続編ともいえるこの本に強い興味があったわけです。

どうやら気になっていた2度目のダイエットは仕事が忙しくなってきたという理由で運動ができず、企画が一時ストップしているあいだに食生活がもとに戻り、7ヶ月で減らした20kgが3ヶ月でリバウンドしたとのことでした。げにおそろしきはリバウンドです。
そしてこの本は、そのリバウンドからいま流行りのレコーディングダイエットに至る過程が赤裸々に語られているのですが、当人が年間-50kg成功したという事実による権威はおそろしいまでに強力であり、ぐいぐい惹きつけられてしまいます。
正直なところ、レコーディングダイエットが他のダイエットにくらべて敷居が低いとは思いませんでしたが、運動を強要されない点と、栄養管理をまずはほぼ放棄することによる容易さは評価に値します。ただしこのダイエット方法は、BMI値30オーバーだったり体脂肪率40%だったり、完全無欠の肥満体形向けで、さほど太っていない人が体形を改善させるためのダイエットには不向きなように思えました。(それは著者も認めているようで、一定段階を過ぎてからは他のダイエットとの併用を推奨していました)

むしろこの本は、レコーディングダイエットに用いた「見える化」を推奨し、各種問題に対して徹底したリサーチによる原因の明確化と具体的な行動計画による改善方法を提案しているように思えます。著者も述べているとおり、ダイエットという間口の広い話題ということでとても解りやすい内容なのですが、なにもダイエットだけではなく、他のことにも色々応用がききそうです。

この本はほぼ無条件でオススメできる威力があります。

このアーカイブについて

このページには、2007年12月以降に書かれたブログ記事のうちカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは本: 2007年10月です。

次のアーカイブは本: 2008年1月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ