本: 2007年1月アーカイブ

蒼穹の昴

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浅田次郎の最高傑作と名高い蒼穹の昴、ようやく完読しました。前々から読むつもりではいたのですが、ハードカバー2冊の威圧感と、割と好んで読んでいる中国物とはいえ清の末期というあまりなじみの無い時代を舞台としていることからなかなか踏ん切りがつかなかったのですが、読み始めてからは完全にハマって一気に読んでしまったものです。
このお話は史実とフィクションをミックスした内容なのですが、主人公とサブ主人公扱いの李春雲と梁文秀は架空の人物です(モデルはいるらしいですが)。この二人の微妙な関係を軸に、史実の漢が暑苦しいまでに存在感を示しています。というか、主に李鴻章なのですけれども・・・
この将軍、物語を読み進めるうちに私の中では南宋の宗沢とキャラクターが被ってしまったのですが、こちらはなんといってもプレジデント・リー、将軍ではなく総督や執政官というイメージで、軍事は政治の一側面というスタンスがとってもクール。宗沢よりも各は3つくらい上だとおもいます。
あとは悪役として袁世凱と栄禄。特に栄禄は半端ではない腹黒さで、能力はたいしたことが無いものの怪物じみた欲望で清を食い荒らすのがまさに悪役の鏡です。袁世凱は言わずもがな、史実でも悪役ですがこちらでも悪役で、特に後半は腹黒栄禄と最強タッグを組んでブイブイいわせてくれますが、史実での彼の絶頂期までは描かれていません。残念なのは袁世凱のライバルとして創作された王逸がかなりお気に入りの人物だったのですが、活躍の場があまりなかったことでしょうか。科挙のあたりでは重要人物だったのですが、李鴻章の幕僚になってからは出番がめっきり減ってしまいました。

あとは西太后や楊喜禎などもなかなか味のある登場人物ではありましたが、ひとりひとりを上げてゆくときりが無い&ネタバレになるので控えます。
最初に述べたとおり中国の近代という日本の小説ではメジャーではない時代のお話ですが、その点が気にならない人であれば強くオススメできる本です。

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本のレビューサイトを見ているとこの本をベストの作品の一つとして挙げているサイトが多数あったので、前々から読んでみたいとおもっていました。初版が戦中の1937年と70年前の作品なので古本屋でみつかるだろうとタカをくくっていたのですが、とうとう我慢の限界に達しアマゾン召還した次第です。

予備知識の段階で、すでに手元においておきたいと思わせるだけの雰囲気のある本だったのですが、確かにこの本は買って悔い無しです。中学生の通称コペル君の成長を通して、自分と見つめ合うことの大切さをわかりやすく丁寧に説明するという内容なのですが、人生において忘れてはいけないことを凝縮させたような重みがありました。過去の苦い経験の記憶が普段の生活では完全に忘れていてもふとしたきっかけで突然よみがえってくることがありますが、そのときの苦い思いは向き合って消化しなければならないことであり、またその経験の大切さについてコペル君が考える過程に強く共感するものがあります。
だいぶ前にソフィーの世界という本がありました。あちらはソフィーを通して哲学を学ぶというものだったとおもいましたが、こちらはコペル君を通して倫理を学ぶ本であると言えるでしょう。これが戦中に書かれたというのは本当に驚きですが、帝国主義にかぶれた当時の日本の中にも良識をもった人間がすくなからず存在したというのは、その後の日本にどれだけの財産になったでしょうか。初版から70年を過ぎた今も岩波文庫のランキングをやると必ず上位にランキングされるということから、筆者の吉野源三郎氏の偉大さの一端を見たように思えます。

Fate/Zero

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提督ありがとう。おかげで三連休に読むことができました。もう読み終わっちゃったけど。

というわけで、Fate/Zeroです。手に入ったのでそのままの勢いで一気に読んで、全4巻構成というのを改めて確認して今、恍惚の溜息をついているところです。
ネタバレは皆さん謹んでいらっしゃるようなので私もその例に倣いますが、全体の感想として、Fate本編を食ってしまう威力があります。
ガチなバトルロワイヤル。著者が虚淵玄。つまらない作品ができあがる筈も無いとはおもっていましたが、触りだけでも破壊力は抜群でした。これは期待を裏切らないと確信できる作品です。

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