2012年7月アーカイブ

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星を継ぐ者3部作の最終巻である"巨人たちの星"(誰もが星飛雄馬を想像しそうなタイトルではありますが・・・)を読み終わりました。
といっても、読み終わったのはひと月以上前の話なのですが。
暑さとオリンピックとユーロ2012とグレンリベット18年とD3が主な原因で更新頻度が酷いことになってますけれども、7月の更新が1度だけじゃ悲しすぎるということで今更の悪あがきをしてみようかと思った次第です。

しかしながら、いいわけがましいことは重々承知とは言えこの作品に関しては感想を書く気にならなかったというのも更新が滞る原因の一つでした。なんで書く気にならなかったのか。それはこの作品が"星を継ぐ者"の続編である以外の魅力に乏しいこと。それに尽きます。
"星を継ぐ者"は間違いなくSFの中のSFと言っても過言ではないSFの歴史に残る1冊でありますが、その次の作品。"ガニメデの優しい巨人"は名作の続編としてはこんなもんかなと思えるクオリティがギリギリありました。しかし"巨人たちの星"は、ヴィックとクリスとガニメアンが出てくるという
こと以外はSFではなく単なるファンタジーに成り下がってしまい、前2作がよほど好きならそこそこ楽しく読めるものの、作品単体としての魅力は論ずるに足らないと感じたからです。

とはいえ、私は全2作がよほど好きなのでそこそこ楽しく読めたクチであり、ここまでネガティブに評価する必要も無いとも考えました。
しかし一方で、名著"星を継ぐ者"の続編としてふさわしいだけの存在たり得るかといえば否であると言わざるを得ない、評価の難しい作品と言えます。

前作と全く同じ結論となりますが、全2作が大好きなら必読!そうでもないならスルーでOK。というのがこの作品に対する評価として妥当なのではないでしょうか。

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完全にハマってしまったJ.P.ホーガンの"星を継ぐもの"シリーズ第2弾は、前作とくらべてSFとしての魅力はやや劣ると言わざるを得ないものの、前作が好きならばその続きとしてはこれ以上ないほどのめり込める素晴らしい作品でした。

この作品にでてくるガニメアンは読めば読むほどStarCraftシリーズのプロトスと類似点が多く、Zergはスターシップトゥルーパーズそのままですが、こちらのガニメアンは完全なハト派であり完全タカ派なプロトスとは大きな違いがあるものの、その義理堅い精神性などの点で大変魅力的です。さらにこの作品の良いところは変に捻って悪意をぶちまけるような真似はせず、ご都合主義全肯定のみんなで幸せになる物語構成であり、疑念や不安を微塵も抱かず安心して読めるところも好感がもてます。
無論、いつ何時でもご都合主義が良いというわけではない(むしろ、ご都合主義的ストーリーは個人的にあまり好きではない)のですが、前作から続く血なまぐさい展開やあからさまな悪意などが廃されたストーリーの中ではその王道こそ読者の求めているものだということを織り込んだ、よく考えられた作品構成のように思えます。

最初から最後まで大絶賛のこの作品ですが、実際に私はもう好みのど真ん中を射抜かれてしまったので、他の人が読んで同じように面白いかどうかというのは判断できません。そして冒頭で述べた通り、SFとしてのクオリティは"星を継ぐ者"の方が圧倒的に出来がよいのも事実です。しかし、この作品はその名作たる"星を継ぐ者"の続編であるからこそ、SFとしてのクオリティなど最初から考慮の埒外であると言ってしまって差し支え無く、この作品を読んでヴィクター・ハントとクリス・ダンチェッカーが更に好きになればそれで十分ということなのだと思います。そして、そのように感じられれたのならば、第三弾の"巨人の星"(こうして見ると他の作品に見えてしまうから困るw)を心の底から楽しめること請け合いです。

そして前作にくらべて割合ががくっとさがったSFパートでは、生物学と社会学的見地からの考察が多く、特に社会学的見地から人間の勤労動機について考察したくだりがとても印象にのこりました。SFとしての評価はどうでもいいようなことを先に述べましたが、SF的な見せ場も多数あり、今作はハント先生ではなくダンチェッカー先生がビシっと決めてくれます。

個人的には大絶賛のこのシリーズ。1作めが気に入ったからといって2作目が気に入るかどうかは微妙なところですが、ハマればその面白さは前作を上回るといっても過言ではないでしょう。そもそも、1作目にハマったら確実にコレ読むことになるでしょうからあえて推薦はしませんが、それにしても面白かった。こういう作品が眠っているから読書はやめられない。そういう気持ちになれる一冊でした。

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