の最近のブログ記事

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人間、歳を重ねると物忘れが激しくなるし、体も固くなる。子供の頃にとても楽しく体験していたコンテンツを大人になって再び体験してみると、全然おもしろく無かったり、逆に記憶の中で美化されて再び感動を味わえたりすることもある。だから自分が体験したコンテンツでとても心に残ったものは記録を残し、いつかゆとりある時間を過ごせるときが来たら迷わず邂逅できるように準備をすることは私にとって有意義な行いであると思い、続けているのが当Blogの主な存在理由である。心に残ったコンテンツなら忘れるはず無いでしょ!という意見もあるかもしれないが、人間はふとした瞬間に大切なことまで簡単に忘れてしまう、脳というのは記憶媒体としてはとても不完全なものである。また齢を重ねる上で経験体験の量は膨大に膨れ上がり、記憶すべき事柄そのものが増えてくると、本当に物覚えが悪くなる。老化による性能低下という側面だけではなく、性能に対する負荷も時間が経つにつれて増えてゆくので、人々は物忘れが「激しくなる」。通常あまり使わない強い表現を用いてまで、その現象と向かい合うのではないだろうか。

などとしょうもない独り言を書き連ねておりますが、最近読んだこの作品「スピリットサークル」がとてもよかったので記録に残そうと2か月ぶりにBlogを更新した次第です。これから読む人のことを考えるとネタバレを避けるべき作品であることは自明なので作品の内容については抽象的に、その名の通り輪廻転生、魂の循環のお話である、というところに留めておきますが、全6巻というさほどでもないボリュームのコミックにしては、見事なまでに詰め込んだ、最後まで全く飽きさせない秀作でした。
冒頭の記憶の駄文は、人ひとりの人生ですら記憶があやふやになる中で、魂の輪廻があるとして、過去の人生の記憶が突然復元されたら、興味深い反面、人を人たらしめる記憶が2人分になったら、アイデンティティの維持することが難しくなり、収拾がつかないことになるんだろうななどと思った次第です。(そしてこの作品でもそのあたりに触れられてます)

最近は時間があればコミック書評で高評価されているものをツタヤのオンラインコミックレンタルで借りて読むというのがマイブーム(ちょっと古いかな・・・)なのですが、今回このスピリットサークルはあくまでオマケで、本命はかわぐちかいじの「アクター」だったのですが、こっちは冗長で最序盤以外はちっとも面白くなかったです。もう一つのマネーフットボールはぼちぼちでした。

今年は本当に可処分時間危機と言っても良いほど余暇が少なくて辛い限りなのですが、限られた時間の中で優れたコンテンツをなるべくたくさん体験できるよう工夫するに、ツタヤのオンラインサービスはなかなか便利に使えます。実はNetflixとか優良VoDにも興味深々なのですが、とりあえずはAmazonのプライムビデオですら持て余しているくらいなので、こちらはもう少し余暇が増えたら考えてみようかと思ってます。

今回はオチ無しですが、生存報告も兼ねて。

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最近アニメ化されたそうで、人気作品らしい「幼女戦記」のコミック版を3巻まで読んでみました。
原作はWeb投稿小説で、ノベル版が出てコミック版がでてアニメ版が出るというほぼ完全なメディアミックスサクセスストーリーを歩んでいるこの作品、題名でなんだか萌え作品なのかなと思い、全く手を出しておりませんでした。
さすがにアニメまで放映されると、内容についてそこかしこから漏れ伝わって来る訳で、今回はTwitterのタイムラインから「骨太」とか「ライトノベルの括りだが全くもってライトじゃない」とか、萌え作品ではないらしいという情報が断片的に伝わってきて、それじゃあ...と今回手に取ってみました。

この作品、先に結論から言うと「かなりおもろい!」です。雰囲気的には、古き良き時代の「やる夫作品」みたいなテイストを感じます。(実際、作中に過去読んだやる夫作品の秀作の中の表現とかなり似た部分があるなと幾つかの部分で感じました。)
最近流行り(流行り過ぎ)の異世界モノのテイストを取り入れつつ、現代日本の知識をもったまま幼女に転生した主人公が異世界で第一次、第二次世界大戦とファンタジーテイストをミックスしたドイツっぽい国で大活躍する作品。と書くと、はやりめっちゃやる夫スレっぽいなぁと感じるのですが、ことコミック版に関しては、東條チカさんの圧倒的作画能力で作品のクオリティが2ランクくらい上がっているように思えます。あまり聞かない漫画家さんですが、どうやら原作アリの作品で作画を担当するタイプのようです。
ノベル版は軽い気持ちで読めるレベルのボリュームではないくらい出ているようなので、手を出すかどうかはまだ決めてませんが、とりあえずこのコミック版に関しては、WW1 WW2あたりの独逸テイストが好きなら確実に。佐藤大輔の作品で興奮できる人もほぼ確実。戦争ものがNGじゃなければ概ねOK、と、ストライクゾーンはそこそこ広めじゃないかなと思いますが、人に無条件に進めるような作品でも無いというのはタイトルからして自明でしょう。とはいえ、私のBlogをいまだ読んでくださっている方々にはほぼ確実におすすめできる作品です。(つまり、いい大人がリアルで勧める作品では無いということです。解りますよね?w)
野球でいうならちょっと甘めですがソロホームラン認定です!続きが気になって原作にまで飛びつく感じではないものの、それに準ずる程度には続きが気になるだけの面白さがあると私は評価します。

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以前より話題になっていた新井英樹さんのこの作品、私自身はすっかり存在を忘れていたのですが、いくつかのBlogでとりあげられていたことや、シンゴジラの批評で取り上げられていたこと、そしてなによりアマゾンさんからおすすめされたので、お取り寄せして読んでみました。

新井英樹さんの作品は、電子版モーニングで「宮本から君へ」を途中まで読んで、作風は好きではないけど続きは気になる作品であると認識していたのですが、その後の作品を追いかけるわけでもなく、特に注目していた訳ではありませんでした。ところが、たまたま読んでいた佐藤秀峰さんのnoteで「宮本から君へ」を取り上げられており、その中で宮本~は好きだが他の作品はあまり好きではないとの記述があり、そこでザ・ワールド・イズ・マインの存在を思い出し、あとは冒頭のように商売上手のAmazonさんの術中にはまった訳です。

前置きが長くなりましたがこの作品、確かに話題になるだけのことはあるな。というのが第一印象です。これを2001年のアメリカ同時多発テロ、2011年の大震災前に書き上げたというのは、今読んでみると不思議ではないしても恐ろしく先見性があり、オリジナルの単行本が即刻絶版になるだけの問題性を持った作品であるという評価は大袈裟ではないということが解りました。

(ここからネタバレあり)
本当にざっくりとしたあらすじとしては、2人組の男(片方はのちのカリスマテロリストで、もう片方はカリスマテロリストに感化されすぎた自意識過剰な一般人)が犯罪旅行で大阪から首都圏を経て東北に向かい、そこで無差別テロを始める。一方、ヒグマドンという巨大なヒグマのUMAが北海道から東北に上陸し暴れまわり、東北がえらいことになる。そして事件が一端の鎮静化を見せたのち、カリスマテロリストに感化された人間が日本中、世界中でテロを始めてもっとえらいことになる。という作品です。
見どころとしては、テロリストに対するメディアの放送によって図らずもテロが拡散してゆく様や、命の不平等性や生死感について、一般メディアでは忌避される表現をありのままに描いた点。ただ残虐なだけではなく、今日に於いては絶対とも言うべき命の価値について認めない人間の行動がもたらすものが如何なるものか。そしてそのような人間ですら、価値を認める命に対しては献身的な行動を行うという命の価値の対比などでしょうか。作品のボリュームもかなりなもので、一般的なコミックサイズだとたぶん16~20冊くらいになるはずです。(真説版は極太のコミックx5冊)
テーマは重く、一般的なピカレスク作品の様な痛快さや娯楽性には乏しく、私はこの作品のメインテーマは生命倫理とメディアの放送姿勢に対する風刺であると思っているのですが、いずれにせよ話題作とはいえ娯楽作品を求めてこの作品を手に取ると、ドン引きすること請け合いでしょう。一方で、作品内の社会思想軸は中道的であり、錯綜した極論やネイチャー志向、左右の偏りや宗教原理主義といった変なベクトルがかかっておらず、作中でがっかりするようなことが無い点は好評価できます。
個人的には無差別テロとヒグマドンが落ち着いた最終盤がお気に入りですが、日本国内で起きた無差別テロが「抗うな、受け入れろ、すべては繋がっている」のメッセージとモンのカリスマ性だけで拡散するという部分に、そういう物語であったとしても、やや強引さというか脈略の無さ、動機の薄さを感じました。あとは、AK-47でヘリ落とすのはさすがに無理でしょ・・・とか。それらも大して気にならないだけの質のある作品であり、小説ではありますが貴志 祐介さんの「新世界より」あたりが楽しく読めた人であれば、どうやらあまりコミック喫茶等には置かれていない作品ではありますが一読の価値はあるかと思います。

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この本の著者pha氏の存在はギークハウスを取り上げた雑誌やWebサイトの記事でだいぶ前から知ってはいたのですが、本を読む直接のきっかけになったのはamazonさんのおすすめ本の中にこの本が入っていたこと。「働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」という表紙のキャッチコピーが今年の初春に激務で弱っていた私の心に気持ち良いほど刺さり、kindleで読みました。
キャッチコピーの「働きたくない」これにはめっちゃ共感し、「家族を作らない」は、まぁ成り行き任せのままだと家族は作らないというかできないよね!と感じ、「お金に縛られない」に関してはある種の理想ではあるが、縛られないのはほぼ不可能、というのが読む前の感想でしたが、読み終えても概ね感想は変わりませんでした。
しなしながら、著者のpha氏の考え方はお金の部分を除いて私とかなり近いな、共感できるな、という部分が多数あり、特に仕事に関しては我慢ならないほど辛くなったらべつに辞めてしまっても良く、そもそも仕事にしがみつく必要は全く無いという解っていても「じゃあ辞めます」とはすぐに実行できない思考と行動のギャップについて、辞めた後、つまり退路を明確にすることによりギャップが若干なれど解消され、精神的にだいぶ楽になれたのがこの本による最大の収穫です。
「お金に縛られない」というコピーは、この本を読む限り「あまり縛られない」くらいかなぁという感じで、やはり現代の日本においてお金に縛られない生活というのはよほどの資産家で自由になる現金がある人に限ったことなのでしょう。ローコストでもそこそこ楽しく生きられるというモデルケースをこの本では提示されているのですが、身も蓋も無い話ですが金銭的な制約がなければもっと楽な生活をすることができるでしょう。自身が会社を辞めてニート生活を満喫する上でのコスト計算を行うと、今まで通りだと月15万円程度、若干倹約して月10万円程度になりました。それを少なくとも平均寿命まで生きると仮定した中で毎月捻出するためには、サラリーマン生活から抜け出すことはできても何かしらの収入源の確保は不可欠であり、そういう意味でも金銭的な制約は常に存在します。個人的には今のうちがっつり稼いで投資も行って資産形成を行い、目途が立ったら脱ラサというベストシナリオに向けて日々尽力しているのですが、なかなか思い通りには行かないものです。(思い通りにいっていたら、たぶんもう脱サラできてるw)ちなみにpha氏はシェアハウスなどを用いて維持コストの低下を行っているのですが、私は完全に一人が良い派なので生活維持コストが膨らんでしまうのは致し方のないところです。
「家族を持たない」は時代の変化により独身が珍しくない社会になってきていることから、べつにいいんじゃないの?程度の話ではありますが、一方で結婚による生活コストの圧縮効果が望めるのならば選択支としてはあっても良いのかなくらいには思っています。もっとも、世間一般の結婚は生活コストが膨張する方が圧倒的大多数なのでしょうが。

という具合に、この本を読んでからおよそ半年、いろいろな影響を受けているなぁと感じます。個人的な計画としては、あと10年そこそこの時間軸で、地方都市の一部で土地価格が大幅に下がる(暴落とまではいかないと思うが)状態になるのではないかと予想しており、そのタイミングで終の棲家を見つけて隠居生活しないなぁなどと思っているわけですが果たしてうまくいくのでしょうか。

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以前読んだ"新世界より"がなかなか面白かったということと、割と最近に文庫版が出た+映画化ということで悪の教典を読んでみました。

この作品は最高クラスのエリートなのにサイコパスでシリアルキラーな学校教師が自分の都合の良いように殺人を繰り返してゆくうちにミスを犯し、殺人の整合性をとるために更なる殺人を繰り返す作品で、いわゆるピカレスク作品にカテゴライズされるものと思います。
ボリューム的には厚めの文庫x2なのでそれなりの量でしたが、展開がスピーディーで文章そのものも読み易く、あっさり消化できました。

反面、面白い作品だとは思うものの、主人公の蓮見が最後まで殺人というものが手段なのか目的なのかはっきりせず(おそらく両方だとはおもいますが)、知能犯でありながら不要な殺人が多かったり、つまらない動機でいらぬリスクを背負い込んだり、中長期的なビジョンに欠けると言わざるを得ない点が残念でした。作中で殺人も選択肢のひとつというようなくだりがありましたが、蓮見の目的がその場凌ぎのものばかりで、わざわざ殺人を選ぶ必要も無いのに安易にそれを選択するところがシリアルキラー(最後はスプリー・キラーそのものですが)たる所以なのかなと好意的に捉えることもできなくもないのですが、個人的には巧みなリスクコントロールで更なる活躍(笑)を続けて欲しかったのが本音です。

重複にはなりますが、それなりに面白いとは思います。しかし、人に薦められる作品では無く、もう一回読んでみようかなと思えるほどでもなく、せいぜいシングルヒットくらいの評価が妥当なのではないでしょうか。貴志祐介氏の作品はこれでまだ2作品目なので、もう何冊か読んでみたいと思っていますが、このレベルの作品ばかりならば買ってまで読みたいとは思えない。ちょっと辛くならざるを得ない作品でした。

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