本: 2009年2月アーカイブ

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 佐藤大輔は娯楽小説作家として常に注目している作家のひとりではありますが、彼の作品には「完結しない」という致命的な欠点があり、いまだに皇国の守護者やレッドサン・ブラッククロスの続きを期待している者としては、憤懣やる方無い思いです。
そこでふと、最近はどんな作品を書いているのかな?という素朴かつもっともな疑問があったので先日図書館で蔵書をさがしてみたら、このなんとも不穏当なタイトルの作品が書架に鎮座していたので読んでみました。

 して、感想なのですが・・・ この本はストーリーを読む本ではなくて、「平壌でクーデターが起きる」というIF(というかジョーク?)を、それぞれの立場から面白可笑しく眺めたものの集積であり、ストーリーが無いわけではありませんが存在意義はほぼ無しと考えて差し支えないでしょう。だからこそ、極東の軍事地政学的なブラックジョーク本としてはかなり面白く読めました。
「ドラえもんなんとかしてよぉ、また@@@がミサイルをちらつかせてるよぉ」
「ステルス爆撃機ぃ。のび太くん、この爆撃機はね、レーダーに気づかれずによその国をたたきつぶすことができるんだ」
一部ではありますが、こんなノリが通用する作品です。
北朝鮮内の描写はもっとシリアスですが、アメリカの幕僚会議は概ねこのノリに近く、こういう温度差が妙にリアルだったりするわけで、この手のジョークがOKな人にならばそれなりに面白く読めるのではないかと思います。
1hそこそこで読み切れるボリュームなので、最近の(といっても5年前ですが)佐藤大輔の仕事に興味のある方ならば、まぁよんでみてもいいかなと思います。

きみはペット

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まずは正直な感想。
小馬鹿にしていてごめんなさい。ガツンとくるほど面白かったです。

基本的に私は偏見を排除しジャンルを問わずコミックでもノベルでもハードカバーでも論文でもはうつーでも手を出す雑読な人間でありたいと思っているのですが、やっぱり多少は偏見をもっていて、「きみはペット」は面白いと聞いても別の世界のお話だとスルーしていました。特に実写のドラマになった作品はそっちを先にちらっとでも観てしまうと、ほとんどのケースでげんなりして原作にも興味を示さないのですが、その姿勢は誤りであったとこの度心を入れ替えました。

基本的にはコメディー路線で設定もかなり無理がありますが、テーマは以外と身近で真面目な問題で、特に後半のドロドロだけど清々しい展開はなんともいえない満足感がありました。
また、外だと超人だけど実はヘタレなすみれと自分をよく知りプライドを持って生きているユリちゃんの絶妙な掛け合い、特にユリちゃんのプライドを持った潔い生き方というのには共感を覚えます。モモはどうなんだろう、一番現実味の無い人間がモモですが、この物語の触媒のような存在なので、登場場面の多さにくらべてあまり内面の見えてこないキャラクタなように思えます。逆に、出番の少ない割にしっくりくるのがエマ(+ヒュー)でしょうか。巌谷と打ち解けたシーンは似たもの同士が反発しあい、解り合うと強いシンパシーで結ばれるというのはコミックの基本であり王道です。

中盤にちょっと中だるみがあったかなぁとおもわないでもありませんが、いままでスルーしていたのがもったいない作品でした。かなり好みが分かれる作品であり、私も2巻のアタマで挫折しかけましたが、撤退を判断するのは黙って4まで読んでからが良いのではないかと思います。

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