2007年2月アーカイブ

070225.jpg
恩田陸さんは未読だったので、手始めに受賞作品のユージニアを読んでみました。この本、直木賞の最終候補にも上がったらしいのですが、惜しくも落選。日本推理作家協会賞を受賞してます。

本の感想なのですが・・・またしてもジャンル特定不能です。推理作家の賞をもらっているので推理小説かとおもいきや、そういうエッセンスはあるもののそうともいえず、ミステリーテイストもあるが、とてもミステリーとは言えない、そういう作品です。構成に特徴があり、物語はすべて証言を連ねた形ですすんでゆきます。TPO、特に時間が3つの軸に分かれていて、それぞれいきなり飛んでしまってわけがわからなくなりそうなのですが、不思議とそういうことはなく、証言する人間が代わっても、いきなり飛ぶのではなくてバトンを受け取って走り出すような、そんな話の進み方をしています。

私は1回読んでおもしろかったけれどもよく解らなくて、2回目読んで、それでもまだまだわけが解らない状態で、次はネットで解釈を探したもののこれ!というものがなく、要するに最後まで犯人がわからず終い。物語でも犯人死亡、共犯者不明でおわっているのをそのままにうやむやになってます。それが恩田さんの作品の特徴だという話も聞きましたが、面白かったけれどもすっきりしない作品というのが私の感想です。
次はミステリじゃない作品を読んでみたい作家さんでした。

三国志

user-pic
0

072018.jpg
なんだか最近、DSの三国志大戦のネタをよく目にするようになったことと、某イスカンダル(笑)のモデルの一人が曹操だという逸話を聞いたことで、久々に三国志でも読んでみようかという気分になりました。
しかしながら、活字で読むのも時間がなぁ・・・ということで、結局は蒼天航路に方針変更です。
この作品、赤壁の戦いが終わったくらいに原作者が亡くなったそうで、確かにそういう予備知識で読むとそれ以降は作風に独特のキレがなくなったかなぁと思わないでもないのですが、それでも、三国志関連の作品では頭ひとつ抜けて好きな作品です。
とにかくこの作品、曹操の溢れる漢力(オトコヂカラ)に現実を生き抜く勇気を貰えます。ただの粗暴や豪快とは明らかに違う、野蛮な中の知性、合理性の中の愚考、あらゆる背反する思考を一人の人間が抱えることができると、あんな人間になるのでしょうか。とにかくあらゆるメディアのキャラクタの中でも、この作品の曹操は際立った存在感があります。
作品としては、官渡の戦いまでは走り抜けるような作風で爽快感のある戦場の表現が多かったのですが、それ以後は曹操の為政者としての側面が色濃く描かれている点が特徴だと私は感じました。特に好きな場面は、郭嘉の北伐、荀彧と曹操の儒の扱いから発生した軋轢と、荀彧の死の表現、程昱の引退のところです。常に曹操に振り回されていた軍師が、自分の存在に折り合いをつけたあとに曹操との離別があり、普段みせない曹操の哀の感情がなんともいえない重苦しさで描かれているのがとても心に残ります。あとは、アクションシーンとして張遼vs呉の「張来来!」、長坂での趙雲、「万人の敵」モードの張飛、その他韓遂のダンスや徐栄の「論ずるに術がござらん」のシーンなど、いくつもの名場面を思い出せることからもとても印象深い作品です。

ちなみにこのあと妙に三国志なゲームを遊びたくなって三国志11を遊び始めて貴重な日曜日を潰してしまいました・・・ コーエーの三国志を題材としたゲームも、蒼天航路の影響をかなり受けているなぁという印象を受けます。それにしても11では関羽と張飛が馬鹿みたいに強いので、どのシリーズでも苦労する劉備ですが11だけはかなーり楽に戦えます。

エマ

user-pic
0

070207.jpg
エマ、全7巻読み終わりました。
きっかけは某BBSにて最低男は誰だ!という議論の有力候補としてモンキーターンの波多野が挙げられていたのですが、その対抗馬としてエマの主人公ウィリアム=ジョーンズが出現し、そのままぶっちぎった経緯から一気に興味が沸きました。この作品はメイドブームの寵児のような作品らしいのですが、そういう趣味が全く無い私にはおそらく公平な評価ができると読み終わる前は思っていました。しかしながら・・・

なるほど、ウィリアム=ジョーンズは最低野郎の名に恥じない男と断じます。コイツは波多野より確実に酷いというか薄情というか、あまりに自分本意というか、エレノアがあまりにも気の毒です。少なくとも私はエマより断然エレノアに思い入れがありましたので、彼奴の行為はもぅ回転式逆磔の刑すらも生温いと感じました。読んでない方には何がなんだか・・・な話ですが、最後まで読んだ方なら必ず同意してくれることでしょう。

私的最低野郎ランキングの中でもかなりの上位進出が見込まれるウィリアム=ジョーンズですが、塙王(@十二国記)やらハイドリッヒ=ラング(@銀英)などと比べるとベクトルがややずれているものの絶対値はそう変わらないかなぁという評価に落ち着きました。つまりそうとう酷い野郎だと思っていただければ結構です。

070203.jpg
この本を読むきっかけは、中二病なる造語をみかけたことです。なんでも、突然洋楽を聴き始めたり、アウトローに傾倒したり、難解なサブカルチャーを意味もわからず嗜好するなどの思春期における背伸びとアイデンティティの確立過程の妄想が過剰なまでに膨らんだ状態のことだそうです。元は伊集院光がラジオで提唱したモノらしいのですが、誰にでも大なり小なり経験があることなのでネタになりやすいのが特徴でしょうか。この本はその参考書として挙げられることがあったのと、石田 衣良の本はまだ未読だったので直木賞をとったこれから手をつけたというのが選択理由です。
内容は東京は月島に住む4人の中学2年生の日常の中の変化を描いた作品で、描写が妙なところでリアルなのが特徴です。月島は東京にいた頃はもんじゃを食いにちょくちょく訪れた街で、そのほか銀座や晴海埠頭など見知った場所が舞台だとなんとなく親しみが湧いてくるようで、最後まで楽しく読めました。

このアーカイブについて

このページには、2007年2月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2007年1月です。

次のアーカイブは2007年3月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ