本: 2008年5月アーカイブ

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ビジネス書はあまりレビューする気にならないのが常なのですが、この本にはとても共感を受け、サービス業や製造業に携わる人ならば自信をもってオススメできると思ったので簡単に紹介します。

大久保寛司氏は企業のCSに関するビジネス書籍を何冊か書いているこの筋では著名な方で、元はIBMのCS部門に所属していたそうです。
この本では、顧客第一主義の経営についてごく基本的な部分をいろいろな事例を挙げながら解説しています。ほぼすべての業種で、経営理念の中に顧客第一主義に類する文言が含まれている中、それを実践しているケースは稀であり、逆にしっかりと実践できている企業は軒並み良い業績を上げているという実例を元に、売り上げ第一主義から顧客第一主義経営へ変わってゆくための手法がいろいろと提示されています。
この本は首尾一貫してほぼ自明と思われるごく基本的な事柄のみ扱っているにもかかわらず、自らの過去の行いを照らし合わせてみれば反省すべき点が山ほどあり、自分の中の判断基準を修正すべき点をよりクリアにするためのヒントがいろいろありました。概念的、抽象的な話も多く、書かれていることを実践してすぐ効果があらわれるモノではないことから感じ方はマチマチだと思いますが、私自信は青臭い理念を素直に受け止めるくらいの気概はもっていたいものだとおもいますし、そもそも、すぐに効果が出る手法の方がよほど疑ってかかるべきだと思います。
この本を読んで一番よかったと思える点は、迷いや不安へのストレスを自らの目線やスタンスを少し変えてやることで、長い目で見て減らしてゆけるという感触があったことです。おそらく、この本に書かれている内容を実践しようとすれば、業務上の手間や工数は短期的視点だと明らか増えることはほぼ自明です。しかしながら、それらを実践すれば少なくとも自分の行いを不安に感じるケースは減り、自信をもって業務に集中できるということは、手間暇の増を補って余りあることでしょうし、長期的に見ればむしろ工数が減ってくるはずです。(その分をさらなる創造活動に充てる必要がでてくるのですが)
有り体に言ってしまえば、つまらないことでウジウジ悩むことが少なくなるということは、ウジウジモードに伴うパフォーマンス低下の期間が減り、その分多少の工数増は十分に相殺できるということです。精神衛生は何物にも代え難いものなので、悩みが減るのはデカいです。

大久保寛司氏の本は他にも何冊かあり、どれも興味深い内容のようですが、製造業、サービス業、リーダーシップを求められる環境にいる方には有益な本なのではないかと思います。

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実は未読でした。
ヘミングウェイは「武器よさらば」の影響か、硬い恋愛小説家というイメージがあったのですが、この作品を読んで、ハードボイルドの原型と評価されているということについても得心がゆきます。
老人の気骨に溢れたカジキとの格闘、そして老いを象徴するかのような帰路。そして港に着いてからの哀愁であったり、冒頭から老人と対比するような少年の若さと、その労りを素直に受け取れない反骨心など、老人の心の葛藤が胸に響く作品でした。
経験上、アメリカ文学の名作は、当たり外れが大きいと思っているのですが、原因は訳によってどうしようもなくつまらないものになってしまうことだと考えています。(私はフィッツジェラルドで痛い目に遭いました)その点、福田ツネアリ氏の訳はカジキとの格闘シーンで道具の名前がはっきりしないように思えた以外は概ね良好なのではないかと思います。もっとも、原文を読むだけならともかく、訳との雰囲気の違いを感じ取れるほど英語が堪能なわけではないのですが・・・
アメリカ文学は学生の頃にスタインベックの対訳本で英文の訓練をしたことから割と馴染みが深く、いろいろと手を出しているつもりでしたが、じっくりリストを眺めてみれば、超がつくほどメジャーな作品でもまだまだ味読ばかりです。一人の人間が一生のうちに読める本の量を考え出すと切なくなってしまいますので、健康に気を使い少しでも長生きして少しでも多くの作品に触れてゆきたいと思ったGWの夜でした。

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