狼の口 ヴォルフスムント 全8巻

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珍しく3巻以降ずっと発売日に定価で電子版を買い続けていた作品である「狼の口 ヴォルフスムント」が8巻で見事に幕を閉じました。スイス建国の誓約同盟からモルガルテンの戦いまでをしっかり描き切り、きれいに終わらせた潔さは高く評価されるべきでしょう。
中世暗黒時代の容赦のない残酷さを強調した序盤の展開から、徐々に物語はハプスブルグ家と誓約同盟3か国の戦争に推移し、最後はなりふり構わぬ奇襲で独立を勝ち取るストーリーは作画の美しさ、巧みなコマ割り、適度なデフォルメ感でとてもまとまりのある作風で、残酷な表現が多々あるため誰にでも勧められるわけではありませんが、ややグロOKな人で歴史ものが嫌いでなければ1巻の冒頭から引き込まれる素晴らしい作品です。
個人的にはこの作品を読んで、スイスがアルプスののどかなイメージとは裏腹にものすごく独立心の強い、国民総山岳兵で、一般家庭にも防空壕がある、力で勝ち取った永世中立国たる所以の一端を垣間見た気分です。国民全員に民間防衛の手引きが配られるお国柄は、ハプスブルグ家による侵略を幾度となく跳ね返してきた、まさにこの作品のような歴史から作られたものなのでしょう。機会があれば、スイスの民間防衛の手引きの日本語訳を読んでみたいとさえ思えるほど、ちょっとしたスイスブームが私の中で始まろうとしてしまうくらいに面白い作品でした。あまりメジャーな雑誌で連載されていたわけではないので、漫喫で見つかるかどうか微妙なところですが、個人的には大変おススメであり、コミックファンならば一読の価値は確実にあるものと自信を持って言えるクオリティがこの作品にはあります。

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このページは、necokickが2016年11月15日 23:07に書いたブログ記事です。

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