佐藤大輔 「征途」 全1-3巻

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あけましておめでとうございます。
ぶっちぎりで更新最低記録を打ち立てた2013年、公はともかく私的には因果応報という名にふさわしい自分史上最低パフォーマンスの一年でしたが、心機一転2014は堅実な自己運営を目標として過ごしてゆきたいなと考えております。

 さて、正月休みに読んだ本の中でぶっちぎりに面白かった作品、あの佐藤大輔の作品群の中で唯一完結している作品「征途」を読みました。
読んだきっかけは極めて偶然でした。年末に贔屓の作家さんが2013にどんな活動をしていたのかWebで調べていたところ、佐藤大輔はRSBCや皇国の守護者の続編を諦めていないなどというよもやま話を見かけ、そういえば最近彼の作品を読んでないなと思い、長編で完結した作品はないものかと探したところ「唯一の完結作品」たる本書に出会いました。
(蛇足ではありますが、2013年に於ける私の読書習慣にとって極めて奇跡的な年であり、田中芳樹のタイタニア、小野不由美の十二国記、森岡浩之の星界シリーズの新刊がリリースされ読むことができた特異的ともいうべきものでした。)

 さて、「征途」ですが、私の結論はスマッシュヒット、この作品をホームランと言わずにどの作品が本塁打といえるのだろうか?!というほどハマりました。もっとも、断じて一般受けするものでは無いのですが、「艦これ」をプレイしている、いわゆる「提督」にはかなりの割合で刺さる作品だと思います。(無論、私も提督です!)
 大まかな内容としては、史実と違い太平洋戦争で日本の大艦隊がレイテで大勝利を収め、米国勝利の日程が後ろにズレた影響で北海道の北部と樺太がロシアの侵攻によって終戦後「日本人民共和国」として残った世界のお話で、幕末から日本の海軍に関わる藤堂家を中心にその戦史を追う形のいわゆる架空戦記ものです。一般的には佐藤大輔の出世作と言われているようですが、私はRSBCや皇国の守護者などを始め他の作品こそいろいろ読んでいたものの、本作品については全く予備知識無しの状態でした。
 本作品を読み始めて最初に感じたのは、「艦これ」がこの作品に影響を受けているのだなぁと言う点で、無論どちらも太平洋戦争の海戦をメインテーマに扱った作品であるという共通点がある以上その影響があるのは当然とも思えますが、「艦これ」を楽しく遊んでいる人であればこの作品に多くの共感を覚えること、まず間違いないでしょう。
 もっとも、征途は太平洋戦争のくだりは1巻から2巻の前半部分くらいで終わり、その後はベトナム戦争への自衛隊派遣や湾岸戦争を経て祖国統一戦争まで語られており、それらがまさしく征途ということなのだと思います。一方で、皇国の守護者で最高潮に達したいわゆる「佐藤節」と呼ばれるような独特の語りはそれと感じられるような部分がほとんど無く、そういう意味で佐藤大輔の作品群の初期の作品であるというのが解りました。また、この作品が1993年に出版されたものであるにもかかわらず、殆ど時代錯誤を感じさせない点に驚きがあり、未来の事象について殆ど語られていないとはいえ20年前の作品であることを考えれば思わず唸ってしまう文章表現力でした。

私は艦これをやっているという以外ではとくにミリタリー好きでも艦船マニアでも無いにも関わらずとても楽しく読めたということは、誰が読んでもそこそこ楽しめる要素があるのではないかと思います。この本は中古でもプレミアがついている様子であり電子化もされていないことから安価での入手が難しいのが残念です。

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このページは、necokickが2014年1月 5日 16:32に書いたブログ記事です。

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