人間は何を食べてきたか ①食と文明の世界像

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世界の食文化を取り上げたドキュメンタリーのDVDで、レビューで高評価されていたので観てみました。
30分のドキュメンタリーの2本立てで、1つめはドイツの食肉文化について、農家のソーセージ造りを軸にしたもの。家畜の豚を解体してソーセージを作る過程を余すことなく映しており、豚の解体シーンは・・・グロテスクなどと思うどころか、解体職人さんのあまりの手際のよさにただただ感心するばかりでした。屠殺して血抜き>後ろ足の腱に棒を通してフォークリフトで逆さづり>熱湯を入れた樽につけてから毛を毟る>腹を割いて内臓を取り出す>背骨をタテに割って2枚に分ける>リフトから降ろしてさらに細かくカット
という手順で解体し、味を付けた後に取り出した内臓に詰めたりパテにしたり燻製にしたりするわけですが、それらの作業を3人がかりの4時間で片付けてしまう光景はまさに熟練の技でした。
なんでもドイツでは中世から木の実で育てることが可能な豚を家畜として飼う文化があり、各季節に1匹ずつ豚を潰して保存食を作る伝統がいまなお農村部で続いているそうです。そのソーセージ(ブルストというそうです)の種類は軽く40以上あり、どれも美味しそう!しかしいまでこそ嗜好品の一つとして捉えられているブルストは、かつて生きるための手段であったわけで、蹄と目玉以外のすべての部位を使い切ることでその精神を受け継いでいるように思えました。

2つめは穀物がテーマで、ヨーロッパの小麦、東南アジアの米、南米のジャガイモ、など、各地方の穀物文化を取り上げたものでした。が、こっちは豚の解体にくらべて華がなく、内容はおもしろかったのですが、いまいちとらえどころが無かったなぁというのが正直な感想です。今なおヨーロッパの山岳部では狭い農地で小麦を植えて、黒パンを石窯で焼いて生活している家庭の映像は牧歌的な風景とは裏腹に、都市部とはくらべものにならない厳しい自然の脅威にさらされているとのことなのですが、このDVDが作られた頃と今ではかなり情勢が違っているようです。(現在では世界の穀物生産は特定地域に依存する傾向が急激に高まっています)

それにしても、作中でなんども語られていたことではありますが、現在の日本の食卓というのはあらゆる時代あらゆる国のそれとくらべて、最も贅沢であるということは紛れもない事実なのでしょう。ミシュランの世界グルメ都市格付けではぶっちぎりで東京がナンバーワンであったとのことですし、一般家庭で和洋折衷日替わりででてくる国は日本を除けばほとんど無いそうです。それじゃ太るのも仕方がないよね!と思いたいところですが、WHOの統計では肥満人口率がもっとも少ない国のひとつに入るそうで、やっぱり日本の食文化は恵まれているのだなぁと改めて思った次第です。

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このページは、が2009年4月15日 23:23に書いたブログ記事です。

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