陳瞬臣  「中国近代英傑列伝」

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 最近お気に入りの中国近代モノです。陳瞬臣先生の新書で発行もわりと新しいのですが、集英社の新書はノーマークなので図書館でみかけるまでまるで知りませんでした。
 内容は、アヘン戦争以降に活躍した中国の英傑列伝で、登場人物の有名どころは林則徐、李鴻章、孫文、魯迅、袁世凱あたりでしょうか。以前に読んだ「蒼穹の昴」の梁文秀のモデルである梁啓超や、作中にでてきた康有為なども含まれています。

 読んでみて思ったことは、その時代の知識が多少はないと内容を理解するのもむずかしという点で、私も最近凝っているので理解できたものの、予備知識無しでは面白くは読めなかったでしょう。清朝での科挙制度の概略やアヘン戦争、太平天国、清仏戦争、東学党の乱、義和団の乱、辛亥革命あたりはまで押さえておかなないと、誰がどっち側の人間かというのがかなり解り辛いです。まとめてみると、洋務派と変法派、変法派の中に保皇派と革命派があるだけなのですが・・・この度はそれが理解できただけでも収穫です。
 李鴻章が現代中国ではあまり評価が高くないということ(最近はだいぶ見直されてきているらしい)は驚きでした。その理由というのは偏に国土の喪失にあると言われれば、低く評価される理由も全くわからなくは無いです(でも不当だと思います)。私個人としては、あの時代、あの状況で踏みとどまれたのはプレジデント・リーの活躍そのものだと思うのですが、天津条約の内容と日清戦争の結果だけをみれば、たしかに負け続けと言えなくもないのでしょう。
 また、魯迅の著書である「阿Q正伝」は、高校の図書館の書庫の中で、私のお気に入りの席からちょうど見えるところに格納されていて、何度か読んでみようとおもったものの、軽く目を通しただけで終わってしまった思い出があるのですが、この著書にて彼の国の人のメンタリティについて言及しているとのことなので、とても興味をそそられます。

 この本でも言及されていましたが、なぜ清がアヘン戦争を仕掛けられるような状況になってしまったかという原因は、劉大夏の焚書がかなり大きな要因になっていたのではないかと思います。かつては海をも支配していた中国が、そのエッセンスを後代に繋げず、元明清代は海を知らない国家になってしまったから列強と大きな隔たりができてしまったわけで、アレが無ければもうちょっと外にもベクトルが向いて、大きく近代化に乗り遅れることはなかったのではないかなと思います。でも、元代は海に対する意識がおしなべて低いので、本があっても駄目だったかもしれませんが・・・。そもそも、清代は末期はともかく中期は世界一の繁栄を誇った国家ですし、あまりの穏やかさに外へなにかを求める必要がなかったのかもしれません。それはそうと、劉大夏は田中芳樹が盛んに中国史上最低野郎の一人として挙げていたので、なんとなくその名前自体には親しみが沸くとともに、どんな本であれ燃やすのだけはぜえええええったい駄目だという意識、ひいては言論の自由の尊さを学んだことを久々に思い出しました。本にかぎらず、なんでも受け取る人の意識次第ということでしょう。
 なにはともあれ、この本は中国近代史入門にはオススメの一冊です。歴史年表片手にいろいろ調べながら読むのも一興、他の本で予備知識を仕入れてからだとさらに楽しく読めると思います。

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このページは、が2007年4月12日 23:49に書いたブログ記事です。

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