ES

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大尉さんのオススメ映画、ESを観ました。
オールシネマのサイトより抜粋
20名ほどの被験者は無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、学内に設けられた模擬刑務所に収容された。初めはそれぞれの役を演じるだけの簡単なアルバイトと誰もが考えていた。しかし、実験が進むうち、「看守役」の攻撃的な振る舞いはどんどんエスカレートしていく。それに対して、「囚人役」は卑屈に服従するのみで、まったく抗議できなくなっていく。いつしか、模擬刑務所内は単なる実験の枠組みを越えて、もはや誰にも制御不能の状態に陥っていく。

という、観る前からサイコーに面白そうな映画なのですが・・・ネタバレすると興醒めする危険性があるので感想は追記の方で。

実際にスタンフォード大学で行われた実験の結果が気になりますが、映画では2人も死者がでているというのが、映画とはいえ衝撃的でした。
犠牲になった2人も、一人は囚人サイドで積極的に荒らしにかかっていた者ではなく、消極的だったキヨスクのおじさん。もう一人が暴動により看守側から出たというのが意外というか事の恐ろしさを物語っています。看守を殺したボッシュさんももとは看守側で一番理性的というか正気を保っていた人だったのですが、他のイってしまった看守にリンチされた挙句、勝手に囚人にされた挙句パニくって殺人してしまったというのが気の毒すぎます。最後は死体の横で武器の消火器をかかえたままうずくまっているシーンが印象的でした。
行動学的な解説は一切無かったのですが、看守サイドはどんどん高圧的に、サディスティックになってゆき、囚人側は従順、没個性になってゆくというのが実験結果なのかなと思うのですが、実際の実験でここまで顕著に結果がでるのかどうか、わたしは疑わしくおもっています。
映画の中の台詞に「覇権争い」というものがあったのですが、この実験は囚人と看守という枠組みとは別に、ランダムに集められた集団の中での個々の役割を観察することと、集団全体のイニシアチブを誰が持つのかという点も大きな実験目的の一つだったように思えます。
正直なところ、最初に大尉から内容のあらすじを聞いたときはそこまで非人道的だとは思わなかったのですが、囚人はともかく看守の精神状態がここまで変わってしまうという点を考えると禁止実験になるのも納得です。
見終わった後には、イラク戦争でイラク人捕虜を虐待したアメリカ兵の話を思い出しました。シチュエーションは違うとはいえ、看守がサディスティックに変わってゆく様というのは同じ現象なのかなぁと思います。行動学的にこうだから仕方が無いといういいわけは通用しませんが、少なくとも管理する側にはこれらを回避する義務があるのでしょう。日本でも刑務官の汚職や暴力が一時期話題になったことがありますが、考えている以上に「絶対的な上下関係」をスムースに運用するのは難しいようです。このような特殊例に限らず、メソッドに従った対人関係とはいえ円滑に進めようとするのならば部分的でも信頼関係の構築が不可欠だと思いました。

コメント(3)

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この映画は見ました。
感想は・・・囚人がおとなしすぎるといったとこですか
アルバイトとわかってるなら普通逆切れしますよね。
裁判になっても余裕で勝てそうですし

普通の状況だったら普通に切れると思いますよね、確かに。
身体的な自由を奪われ、名前というアイデンティティも番号に置き換えられた環境下で数日過ごすことで、判断能力も落ちてくるのでしょう。マインドコントロールの過程でも、睡眠をはじめとする身体的な自由を奪ったり、徹底的にアイデンティティを破壊することで判断能力を低下させるテクニックはよく利用されます。
スタンフォードの実験のVTR、一部テレビで見ましたが、あそこまでひどくないにしろ映画と同じような雰囲気でした。看守の傲慢さと、それにおびえる囚人の姿が。
同様のVTRで『青い目、茶色い目』も(前に紹介したと思いますが)オススメです。英語版しかWEBにはありませんが。
http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/divided/

私はむしろ、実験とはいえ囚人も看守もアクティブ過ぎる気がしました。
主人公はともかくとして他の人の目的は実験そのものというよりは、大過なく14日を消化したあとの報酬であると考えれば、お互いなぁなぁで済ませる雰囲気になるのではないかと思います。
また、囚人を効果的に管理する方法論としては、いわゆる「五人組」制度を有効活用できなかったのかなぁというのが私の感想です。
とはいえ、閉鎖環境でのモラルの維持というのは、考えている以上に難しいのかもしれません。

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このページは、が2006年10月22日 23:49に書いたブログ記事です。

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