筒井康隆 "旅のラゴス"

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ネット上の読書系掲示板で頻繁に行われる"読まなきゃ読書人生を損する作品"のスレッドで旅のラゴスはまず間違いなく出てくる作品の一つです。それほどまでに評価されているのであれば、いずれ読んでみようとおもっていたのですが、なかなかその機会に恵まれず10年以上も放置していました。ところが最近、近所のブックオフもどきな古本屋の100円ワゴンで文庫本を発見し、ようやく巡りあう事ができ、早速読んでみました。

この作品ははかなり薄い本で(直前に読んだ"新世界より"の1/8くらい?)ボリューム的には勤務中の休み時間だけ読み進めても1週間かからず消化できるくらいであり、最初に手にとったときはこのボリュームで本当に面白いのだろうかと不安になったものです。が、物凄く面白いというわけでもなく、興奮するでもなく、されど情緒あり哲学ありSFあり、流転するラゴスさんの人生を時には薄っぺらく、時には重厚に描いた不思議な魅力を感じる作品でした。ラゴスさんは旅の途中で2回奴隷になったり、3人と結婚したり(そのうち1回は幼妻と重婚ですよ!ありえん!!)、教壇に立ったり、為政者に祭り上げられたりと、尋常ではない身分の変化を旅の中で経験するのですが、ラゴスさん自身はその変化の中でも自らの目的のみ追い求め、富や名声にまるで頓着せず超然としながらも全てを受け入れ、そして最後に捨ててゆく姿が実に清々しかったです。

この作品は先にも述べたとおりボリュームが無く、気になったらすぐに読みきれる作品なので、興味があったら読んでみると良いかと思います。が、私は"読まなきゃ読書人生損してる"と思うほどの作品だとは思いませんでした。無論、つまらなくもなく読んで損したとも思いませんが、大きな期待を抱いて読むとおそらく裏切られます。過剰な期待を込めず、軽い気持ちで読んでみるとなかなか面白い作品だなと多くの人が思えるような作品ではないかと私は評価します。

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このページは、が2012年6月 3日 17:43に書いたブログ記事です。

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