彩雲国物語

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近所の図書館にあったので一気に11巻まで読破しました。

この作品、古代中国風ファンタジーでNHKでアニメ化されたという「十二国記」に似た境遇なので、以前より気になってはいたのですが・・・

結論から言うと、良作です。十二国記とは違いパキパキの少女向けライトノベルですが、それでも一気に11冊読むに足るだけの価値は十分にありました。というかつまらなかったら途中で投げますが(笑)
ただし、あまり期待をしていなかったものが意外とおもしろかったというので若干評価が甘くなっている点も否めないと思っています。

ストーリーは紅秀麗という女性官吏が国づくりに尽力するもので、官吏の物語のわりに政治的な要素が少なく、個人レベルの活動をかなり強引に国家運営に結び付けている感があります。秀麗が行政で活躍するストーリーを期待すると拍子抜けするかもしれません。どこかの論評で韓国ドラマの宮廷女官チャングムにノリが似ているとの話であり、ご都合主義でいきなり高官になって豪腕をふるったりもするわけですが、政策で魅せるという方向性とは違ったものです。また、少女向けライトノベルということで美形男子てんこ盛りなわけですが(美形じゃないキャラクタが極めてレアです)、そうでなくては話が転がらないというレベルの影響度ではないので、さほど気になりません。ただし、作風上仕方が無いのかもしれませんが、登場する主要キャラクタのほぼ全てがなにかしらの非宗教原理主義的ともいうべき頑な思想をもっているようで、物語の中ではさほど目立たなくても冷静に分析すると歪なキャラクタが多く、その点は素直に残念に思いました。(お気に入りキャラクタはタンタン君で、彼だけは技能や頭脳は劣っても、人間としては真っ当だと思います。)とはいえ、有体に言ってしまえば紅秀麗の努力と根性が主題のひとつであり、スポーツでは無いもののノリはスポコンに近い部分もあるので、そういった読みやすさ、間口を広めるストーリー展開は個人的にとても評価しています。
おそらくですが、筆者は最初あまり風呂敷を広げるつもりはなかったのではないかと思います。序盤のキャラクタ設定や複線がかなりおおざっぱというか粗く感じ、物語が中盤に突入してからそれの収拾に四苦八苦している印象がありますが、一方でごっついボリュームになる可能性が高そうで、筆者の生産力もなかなか高いことから長年かけて40冊くらい出ても驚かないような作品にも思えます。というか、たぶん収拾をつけるのが困難であり、綺麗な終わらせ方をするのはまさしく至難の業になることでしょう。
一般的な評価もそこまで高いわけでは無いのですが、内容が無難でR指定いらずということもありアニメーションは80話近くも続いているそうで・・・ いろいろ思うところが無いわけでもないのですが、すくなくとも今後も定期的に出版されるという安心感と筆者の生産能力の高さに対する評価は、続編がでるかどうかも定かでない名作に勝るということを実証しています。

ネガティブな感想が多くなってしまいましたが、つまらなければ絶対に11冊も読まないので過度な期待をしないかぎり楽しめる作品と言えるでしょう。私は買ってまで読むつもりはいまのところ無いのですが、図書館で予約するくらいの労力であれば十分払うに値する、そんな作品だと評価しました。しかしながら、小説の表紙は目がチカチカするくらい派手なので画像無しです。借りるのもマリみてよりもキツいです(笑)

最後にすこしだけ既読の方向けの感想をば・・・

でも・・・ 1巻では紅家の第一姫がイレギュラーな事態とはいえ何のトラブルも無く後宮に配置されたのにもかかわらず、11巻では藍家の十三姫が後宮に送られるというだけで陰謀の嵐が吹き荒れるというのは矛盾しているような気がします。巻を追うごとに紅藍両家の権力がそらねーだろという表現がされている点、とても気になります。王家と家名の間の葛藤を描いているというのは解るのですが、理由も無く紅藍両家はスゲェ!という事実ありきという設定が、ここのとろこの不調というか停滞というか、クオリティ低下に繋がっているように思えます。ここまで紅藍両家の力を大きく描いた設定を真面目に歴史上の封建制王朝と比較すると、王朝末期で求心力と実権が王家から貴族や豪族に移り、いずれ大規模な内乱に発展する典型的な状態に見えてしまいます。事実、王朝の不安定な部分を描いているところなのでこれは意図したものであるとは思うのですが、もうすこし個人レベルではなく王朝と貴族との在り方についてのテコ入れがないと、このままずるずる言ってしまいそうな心配があります。

しかしながら、「大丈夫、何がなくたって根性だけは誰にもあるから。無くても作ろうと思った瞬間生まれてくるのが根性だから!」という台詞は実によかった。私の根性の定義を、この台詞を参考にしてみたいと思うくらい心に染みる言葉でした。

コメント(2)

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俺は漫画版の彩雲国買ってるよー。
アニメ版もなかなかおもしろい。
原作は見てないけどデビュー作らしくて
評価は別れるみたいね。

恐らく原作のアラがアニメやコミックではマイルド
になって目立たないので、結果的に出来が良く
なっているような、そんな感じっぽいですね。

というか、コミックまであるのは知らなかった・・・

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このページは、が2008年4月 1日 20:56に書いたブログ記事です。

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